Oeuf
(c) Takumi Ota
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竣工年 :2011年
設計 :flathouse
所在地 :東京都三鷹市
敷地面積 :100.10m2
建築面積 :49.00m2
延床面積 :79.36m2
木造地上3階建
東京武蔵野には比較的大きな公園がいくつもある。この小さな建物はその一つである野川公園を正面に計画された。クライアントはまだ20代の若い夫婦です。美大出身の夫婦はそれぞれ就職した会社でそのセンスを発揮しており、そんな彼らが要望したのは「小さな美術館」のような建物だった。また、そのプログラムは1階にギャラリー、カフェ、アトリエ、そして2階に彼らのための必要最低限の住居スペースである。
彼らは単なる二人の住処としてではなく、コミュニティーの場を必要と感じていた。
そういう意味で、1階は様々な状況に対応できるようにできるだけフレキシビリティを持たせる方が良い。そのような考え方から、プログラムごとに部屋を壁で仕切るのではなく、奥行きと関係性でプログラムを緩やかに分節するという方法が思い浮かんだ。
具体的には単純な正方形のプランの中心にキッチンとトイレを入れた楕円に近いボリュームを配置した。楕円はキッチンとトイレの必要な空間の大きさから微妙に変形され、その配置もギャラリー、カフェ、アトリエの関係性と必要な面積を考え中心からずらしている。
この歪んだ楕円により、ギャラリーとカフェはそれぞれの場所からそれぞれを刺激する関係性をつくりながら緩やかに分かれており、アトリエは他のプログラムからは奥の落ち着いた場所に見え隠れしながら存在する。
一方、2階は1階の半分の面積に抑え、簡素なシャワーユニットがある寝室とした。2階のインナーバルコニーからは1階の吹き抜けの様子が分かるようにし、公園からの来客者があればすぐに対応できるようになっている。
この建物が完成してから夫婦は1年間の準備期間を経て営業を開始した。現在は日曜日だけ営業する至福のカフェとして地元で知られる存在となっている。しかしながら、まだ、ギャラリーは準備期間中とのこと。これからも、ゆっくりと時間をかけて野川公園の前にひっそりと存在する「小さな美術館」となっていくのがとても楽しみである。