2012-03
N.Y.のハイラインと高崎の居酒屋にみるクロス・プログラミング
以前、ツイッターでもつぶやいたことがありますが、私が近年で一番評価している建築プロジェクトはN.Y.のハイラインです。
http://www.thehighline.org/
このプロジェクトはN.Y.に以前使用されていた高架貨物線路を空中緑道として再活用するというもので第一期はすで完成しており、今後も拡張されていく予定です。
ハイラインによって、N.Y.に新しい名所が増えただけでなく、不動産開発や一般消費などの経済効果がありました。
ハイラインは荒れ果てた都市の遺産を非常にうまく再生させた都市と建築の歴史的成功例として今後も参照されていくことでしょう。
デザインチームには自分が大好きなディラー&スコフィディオが参加しています。
ディラー&スコフィディオは自分がN.Y.にいた90年代、インスタレーションや著作で活躍しましたが、実作はほとんどありませんでした。しかしながら彼らの都会的でスノッブな作風に惹かれて密かなファンでした。
当時、勤めていた事務所(隈研吾建築都市設計事務所)が借りていた青山の一軒屋の事務所が取り壊しになる前日、空間の中に点線を描くというディラー&スコフィディオのプロジェクト(WITHDRAWING HOUSE http://www.dsrny.com/)を真似て、トイレの床、壁、天井にマジックで点線を描きまくり、一人で興奮した覚えがあります。
そんな彼らが今では世界中でビッグプロジェクトを展開しているのを見ると感慨深いものがあります。
ハイラインはかつてバーナード・チュミが提唱していた建築的手法の一つ、クロス・プログラミング(建物を意図していなかった用途で使用すること)に変更が都市の活性化に大変な効果があることを再確認させてくれました。
都市や建築が面白いのは、新しいものが必ずしも良いのではなく、古くて歴史のあるものに価値がある場合が多いということです。
(新しい建築や町が「よそよそしい感じ」に見える場合がありますが、そういう場所はだんだん人が離れていく、最悪の場合は廃墟になります。新しい建築を計画する上で自分が一番注意していることが、どうしたら「よそよそしい感じ」にならず自然な雰囲気になるのかという点なのですが、、、)
しかしながら古くて歴史のあるものは、ほとんどが昔のままの使い方では使用が不可能です。だからといって壊すよりも現代に相応しい使い方を考えた方が楽しいし経済効果も期待できるということをハイラインは教えてくれるのです。
さて、ところ変わって、群馬県高崎市で興味深いクロス・プログラミングの例を見つけました。
なんと、住宅展示場だったところを用途変更して居酒屋にしています。
HPを見るかぎり、繁盛しているみたいです。
日本では大規模な用途変更(コンバージョン)は法規的(特に消防法)に大変なことが多いのですが、そんな用途変更の苦労は全く感じさせないところがすごいです。
これは歴史のある建築だけでなく、「よそよそしい感じ」の代表格である住宅展示場のような建築でもクロス・プログラミングが有用であることを証明しているのかもしれません。
今度、調査に行ってみようと思います。
カテゴリー: 日記 | 投稿日:2012年3月21日 | 投稿者:
建築設計とアポロ13号
建築を設計している時、時々アポロ13号の映画を思い出します。
アポロ13号が月に向かう途中、ロケットが故障しました。
一方、我々建築家が設計する際、地球上にいるのにも関わらず、非常に選択肢が少ない中で建物の構成物や製品を選ばなくてはならないジレンマを感じる時があります。
カテゴリー: 日記 | 投稿日:2012年3月2日 | 投稿者: